ヒラメキから突破への方程式

【連載】柴田陽子インタビュー[3]

チーム体制で仕事を進めるシバジム 適材適所でメンバーを伸ばす「柴田流経営術」

柴田陽子事務所

代表取締役

柴田 陽子

文/竹田 明(ユータック) 撮影/久保田育男(OWL) | 2019.09.27

柴田陽子のポートレート写真
ユーザー目線による徹底した独自の手法で「勝てるコンセプト」を作る柴田流ブランディング。広告やメディアでイメージ作りを優先する従来のブランディングとは一線を画し、現代人特有の「感性消費」を的確にとらえると高い評価を受けている。そんな柴田陽子氏は、仕事を進めるうえ、彼女の会社「シバジム(柴田陽子事務所)」を運営するうえで、どんなことに気を配っているのだろうか?

柴田陽子事務所 代表取締役 柴田 陽子(しばた ようこ)

大学卒業後に外食企業に入社し新規業態開発を担当。その後、化粧品会社での商品開発やサロン業態開発などの経験を経て、2004年に「柴田陽子事務所」を設立。ブランディングプロデューサーとして、コーポレートブランディング •店舗プロデュース • 商品開発など多技に渡るコンサルティング業務を請け負う。2012年 東急電鉄「渋谷ヒカリエ」レストランフロアプロデュース、 2014年セブン&アイ・ホールディングス「グランツリー武蔵小杉」総合プロデューサーを務める他、 2015年ミラノ国際博覧会における日本館レストランプロデュース、パレスホテル東京 7料飲施設プロデュース、2019年東京會舘 3代目新本舘総合ブランディングに携わる。また、都内にて飲食店を直営店として経営。「自分が本当に納得のできる、ものづくりがしたい」という思いから、理想の洋服作りをはじめ、2013年秋「BORDERS at BALCONY」を立ち上げる。

「消費者目線」と「経営者視点」で立案する戦略

柴田氏と彼女が運営するオフィス「シバジム」では、クライアントから依頼を受ける際、白紙の状態から考える。クライアントの考えや思い、希望などを徹底的にヒアリングして理解するが、コンセプトワークではクライアントの意向をスタートにもゴールにもしない。ユーザー目線を徹底して「勝てるコンセプト」を作るには、クライアントの意向だけではなく、シバジムが積み上げてきたノウハウを最大限に活用する。しかし、そのために忘れてはいけないポイントがある。「当事者意識」を持って仕事を進めることだ。

柴田陽子のポートレート

「シバジムのスタッフにいつも伝えているのは『自分が社長だったらどうするの?』ということです。企業の戦略を預かる仕事ですから、自分が会社のトップだという当事者意識を持って仕事にあたる。これは絶対に欠いてはいけません。当事者意識を徹底することで、クライアントから信頼も得られます」

また、当事者意識は「経営者目線で考える」というもう一つのポイントにもつながる。シバジムは女性メンバーも多く、消費者目線でサービスや商品を生み出せるのが強みであるが、ビジネスとして成功させるためには、消費者目線だけでは足りない。

「消費者目線で『こういう商品・サービスがほしい』と考えついても、コストがいくらかかるのか、投資の規模や回収に何年かかるのかといったビジネスサイドからも吟味しないと、せっかくのアイデアも、ただの『夢』で終わってしまいます」

消費者の目線と経営者の視点を行ったり来たりしながら戦略を作っていくことが、成功への近道なのだ。

柴田氏は「勝てるコンセプト」を作り出し、それを実現するためのアイデアを生み出すことができる。しかし、シバジムでは柴田氏の圧倒的な才能だけに依存するのではなく、柴田氏以外のスタッフでもクライアントを満足させるプロジェクトを立案できるよう人材育成に力を入れている。

「メンバーの実力アップにつなげる社内ミーティングに力を入れています。ミーティングを通してメンバーを指導し、彼らが成長してクライアントから評価をもらうことが大切です。小さな成功を大きな成功に変えられる道筋を作ってあげるのが、経営者としての私の仕事だと考えています。毎週金曜日の夜に自由参加の勉強会を実施して、私が大切にしてきたことや、成功談、失敗話をみんなで共有しています」

柴田陽子の打ち合わせ風景

シバジムは現在、チーム制でクライアントを担当している。2019年は4チーム体制でそれぞれのチームをリーダーにあたるディレクターが率いて、柴田氏が全体を統括している。柴田氏のブランディングのノウハウをシバジムのメンバーと共有しているから、たくさんのクライアントに対応できる。

「1チームが5~7件くらいのプロジェクトを担当し、全体で年間20~30件のプロジェクトが稼働します。大きい案件も小さな案件も考え方、やり方は基本的に変わりません。仕事を成功させるための秘訣を徹底的に共有すれば、私でなくとも同じ結果が出せます」

人材育成に活用!シバジム専用社内SNS「Leaders Note」

柴田氏の圧倒的な才能に依存するのではなく、彼女が経験から得たノウハウを中心に、メンバーがお互いに切磋琢磨できる環境を整えているからこそ、シバジムはクライアントの期待に応え続けられるのだ。そのために、シバジムではメンバー間の情報共有にも注力している。

柴田陽子事務所専用アプリのキャプチャ

シバジム専用に開発した社内SNS「LeadersNote」。

シバジム専用の社内SNS「LeadersNote」は、情報を共有してメンバーの質を高く保つように活用されているツール。柴田陽子氏を筆頭にディレクター陣がそれぞれチャンネルを持ち、ノウハウや情報を社内に向けて発信する。メンバーは経験に裏打ちされた生きた情報を自己研磨に活かせる。

柴田陽子のインタビュー風景

「社内の人限定で、自社運営しているカフェの情報や、シバジムのことが載っている誌面の掲載情報など、シバジムの情報を発信しています。加えて、『成功したプレゼンの情報』『シバジム流の書類の作り方』など、会社や個人が持つノウハウを見える化して共有し、社員の育成に活用しています」

「柴田語録」という柴田氏の言葉を配信するチャンネルもあるという。

「働くことは生きること。仕事は人間成長の場」「変化に対してポジティブであれ、よくすることに貪欲であれ」「仕事ができる人はどんな人なのか想像し、動こう」など、柴田氏の名言に触れられる。若いメンバーにとっては、さまざまなことを吸収するいい機会になっている。

柴田氏が人材育成に力を入れる背景には、シバジムのモットー「人にあきらめない経営」がある。メンバーが自らの個性を余すところなく発揮して、夢を叶え豊かな人生を得られるようにするのが、シバジムの経営方針なのだ。

「コンサルティングというビジネスは、クライアントを相手にする仕事。知らない相手に興味を持って、理解して、その人の力になります。人の役に立つことが、好きでないと長く続かない仕事で、シバジムに入ったが中にはコンサルティングが苦手な人もいます。そんなメンバーでも『シバジムに合わない』とあきらめのではなく、その人のいいところを生かせる道を一緒に探します」

2013年秋にアパレルブランド「BORDERS at BALCONY」を立ち上げたのは、「自分が本当に納得のできる、ものづくりがしたい」という思いから、理想の洋服作りへのチャレンジであると同時に「適材適所」を実現するためでもあるという。

「アパレルブランドの運営は、モノを作って自分たちから発信するビジネス。コンサルティングとは全く異なります。なので、その能力があるかどうか一人ひとり見極めるのです。実際、BORDERSに異動して大成功した人材も。『役割が人を育てる』『ポジションが人を育てる』と言いますが、適材適所の大切さは日々実感しています」

分刻みのスケジュールの合間に書いた新刊をリリース

東京會舘のリニューアル、定額制セルフエステスタジオ「BODY ARCHI(ボディアーキ)」のプロデュースなど、近年も次々と大きな仕事を成し遂げている柴田陽子氏。彼女とシバジムの元には今も多くの依頼が舞い込んでいる。しかも、柴田氏は活発に仕事をしながら、家に帰れば妻であり2児の母親でもある。分単位で刻まれるスケジュールをこなすために心掛けていることがあるという。

定額制セルフエステ「ボディアーキ」のメインビジュアル

ゼロからコンセプトを担当した定額制セルフエステスタジオ「BODY ARCHI(ボディアーキ)」。

「すべてのことに理由が必要だと考え、自分もスタッフも、行動の一つひとつに意味を持たせて日々を過ごすように心掛けています。だから、無駄なミーティングは開きません。頻度と長さと内容などの計画をしっかり立て、参加者が何を得るためのものかを事前にはっきりさせておきます。自分が出ないミーティングでも建付けだけは必ず確認します」

2019年の下半期も多くのプロジェクトに携わっている柴田氏だが、多忙なスケジュールの合間を縫って、2019年秋の発売を目指して本を2冊執筆中だという。

■幻冬舎『勝者の思考回路(仮)』年内発刊予定
高い志を持ち続けることで、気づけば周囲に味方が多い状況だったり、誰かの役にたてたりするような充実感の中で生きていける。そんな力を備えた人を「勝者」と定義し、勝者である、勝者であり続けるための思考回路はどのようなものか、柴田陽子の日々の経験の中から紹介します。

■小学館『魔法のToDoリストの作り方(仮)』今秋発刊予定
「今よりもっとよくなりたい気持ち」は人生において大切な、生きる力が沸いてくる源。自信が成長し進化することで、応援してくれる人も増え、充実感にあふれる楽しい人生に。誰もが実践できる目標(To Doリスト)のつくり方と活用方法を紹介。

精力的に活動する柴田陽子氏とシバジムから、今後も目が離せない。

連載[1]
ユーザー視点を追求し「感性消費」を捉える! 柴田陽子流ブランディングの方法論

連載[2]
自己とライバルとマーケット 3つの分析を土台に創る「勝てるコンセプト」 柴田流ブランディングの方法論


柴田陽子氏によるブランディングプロデュース施設情報

ボディアーキ大宮店店内

BODY ARCHI(ボディアーキ)大宮店
(2019年10月1日オープン予定)
埼玉県さいたま市大宮区宮町2-23 イーストゲート大宮ビルA館 1F
営業時間:11:00〜最終受付20:30
定休日:月曜日
部屋数:20部屋

ボディアーキ栄店店内

BODY ARCHI(ボディアーキ)栄店
(2019年10月4日オープン予定)
愛知県名古屋市中区錦3-6-8 GI368ビル 9F
営業時間:11:00〜最終受付20:30
定休日:月曜日
部屋数:12部屋

ボディアーキ東急プラザ渋谷店店内

BODY ARCHI(ボディアーキ)東急プラザ渋谷店
(2019年12月5日オープン予定)
東京都渋谷区道玄坂一丁目2番3号東急プラザ渋谷7F
営業時間:11:00〜最終受付21:45
受付開始時間:11:15
定休日:東急プラザ渋谷の休館日に準ずる
部屋数:22部屋
»BODY ARCHI(ボディアーキ)公式ホームページ

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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