スーパーCEO列伝

【特集】株式会社一家ダイニングプロジェクト Theme

【サービス図鑑】居酒屋×ブライダルの相乗効果

2018.04.10

一家ダイニングプロジェクトのスタートは、今から20年前に誕生した「第二の我が家」をコンセプトにした一軒の和風ダイニングバー。そこで生まれた「おもてなし」のサービスを武器に、事業領域はブライダルの分野にまで広がっていった。多様な業態で応用自在なサービスの特徴を紹介する。

外食・居酒屋事業

一家を支える主力店舗

一家ダイニングプロジェクトは、「こだわりもん一家」で、「おもてなし」のベースを築き上げ、「屋台屋 博多劇場」で顧客の会員化のノウハウを完成させた。マザーズ上場に導いた2つの主力店舗を紹介する。

博多中洲の屋台が大集結した劇場型酒場「屋台屋 博多劇場」

屋台を何軒もはしごして飲み歩く博多中洲の楽しさを再現したのが「屋台屋 博多劇場」。武長太郎社長が実際に博多中洲の屋台で飲んでいるときに閃いた業態だ。

名物料理は博多名物の鉄鍋餃子。カリッとした食感とモチっとした食感が重なり、ジュワっとした肉汁があふれる鉄鍋餃子は社長と専務の苦心の作だ。一度食べたらやみつきになる。

毎月13日は「餃子の日」と定めて一皿290円の鉄鍋餃子が130円に。その日の注文比率は前年比300%超えを達成する店もある。すでに首都圏で31店舗展開。平均単価は2500円で、客層は30~40代のサラリーマン層が中心だ。

心からくつろげる第二の我が家「こだわりもん一家」

広々としたオープンキッチンが印象的な居酒屋。“我が家に帰ってきた”というコンセプトなので、スタッフは「おかえりなさい」の言葉で客を迎える。

最大の特徴は巨大なオープンキッチン。オープンキッチンには食材用のディスプレイが設置されており、日本全国から取り寄せた鮮魚や新鮮な野菜が所狭しと並べられている。キッチンとカウンター席の間には畳が敷かれ、着物を着た女性スタッフ(女将)が、その日のおすすめを丁寧に説明する。

また、焼く・煮る・炒めるなど、客の好みに合わせて調理することも可能。我が家のようにわがままも言える店なのだ。首都圏に13店舗展開。平均単価は3800円程度。客層は夫婦や家族連れが中心。接待場所としても人気がある。

ファンが生まれる再来店のメリット

一家ダイニングプロジェクトが手がける居酒屋が業績を伸ばすために注力するのは、一度来た客にもう一度来てもらこと。顧客のリピーター化を促すため、再び訪れたくなる接客に加え、様々なイベント・仕組みを用意している。

「屋台屋 博多劇場」の会員数は1号店オープンから累計46万人

「第二の我が家」というコンセプト、「おかえりなさい」という挨拶……。一家ダイニングプロジェクトでは、創業当時からリピーター客の確保に力を注いできた。そのノウハウの集大成が「屋台屋 博多劇場」の有料会員サービスだろう。入会費は200円。入会すれば、以後、お通し代200円が生涯タダになる。次もまた来たいと思う人は、お得と考え入るはず。

新規顧客が入会するかどうかは、スタッフたちにとって、良いサービスができたかどうかの一種の試金石。入会してもらうことを目的にするのではなく、あくまで良いサービスをした先に会員化がると捉えている。このような循環によってサービスレベルは上がっていくわけだ。

会員証明書は2016年10月よりシールからアプリに代わり来店回数が分かるようになった。それによって、来店数に応じた様々なサービスを実施できるようになった。肩もみ5秒、好みの席の優先予約、お通しグレードアップ、6時までに入店すればジョッキ1杯プレゼントといった具合だ。

また、会員になれば、プッシュ通知でお得な情報が送られてくる。ある時は、「お玉を持ってきたら、モツ鍋半額」、また別の時には、「定規」を持ってきたら、持ち込んだ数だけドリンクをプレゼントするといった具合に定期的に“おもしろ企画”を配信。評判は口コミでも広がり、今や月平均1万人が会員となり、2018年3月末時点の会員数は51万人に達している。

会員になれば、誕生日に年齢の数だけ餃子がもらえる。

一人ひとりがプランナー「おもてなし」を生む仕組み

客は飽きやすい。リピーターを確保するためには、常に新鮮な楽しさや驚きを提供し続けていく必要がある。スタッフ一人ひとりがプランナーとして機能していく仕組みが、それを可能にしている。

スタッフの集まりから斬新なサービスが生まれる

イベントをプロデュースし、社内に感動的なシーンを創造する「感動プロモーション委員会」、衛生状態や清掃レベルを引き上げる「5S委員会」、社内報を作成する「一家新聞委員会」をはじめ、一家プロジェクトには様々な委員会があり、マネージャーから現場社員まで役職を超えて委員会が編成される。

「屋台屋 博多劇場」の様々なおもしろ企画を提案しているのは、「アプリ委員会」。2週間に一度のペースでアプリ会員へ“ラブレター”を送っている。

現場社員が委員会に所属することで、より良い店にするために考える癖がつくし、自発的に客のために何をすればいいのか考える訓練にもなる。また、マネージャーは良いアイデアを吸い上げることもできる。例えば、飲みに来る時間帯は携帯の充電が少なくなっているお客様が多いと感じ、充電器を貸し出そうという案を出したのも新入社員だった。

加えて、社内ではコミュニケーションを円滑にする様々なイベントがある。みんなで盛り上がったり、夢中になったり、仲間との連帯感を感じ、楽しさや感動を体感したことがなければ、人を楽しませることなどできないと考えているからだ。

中でも理念浸透、スタッフのモチベーション向上の為イベントには特に力を入れている。例えば、飲食事業部の「一家祭り」では「感動店舗プロジェクト」と呼ばれる下半期各店舗別評価(売上、営業利益、会員獲得、覆面調査、5S)をポイント化し、そのポイントの合計得点上位6店舗によるステージ上でのプレゼンテーションにより、最優秀感動店舗を決定する。

飲食事業部45店舗の中から最優秀感動店舗を決定する社内アワード「一家祭り」。

またブライダル事業部の「おもてなしウェディングアワード」では、ウェディングプランナーを対象とし、6つの審査項目(把握力・再現力・プランニング力・サプライズ力・オリジナリティ・パートナーシップ)の合計点(”おもてなし指数”)で評価された上位3名がファイナリストとして選出され、当日のプレゼンテーション、投票を経て、最優秀プランナーが決定する。

教育制度、モチベーションアップ、提案制度などが複合的に働くことで、個性的で魅力的な「おもてなし」が次々と生まれるわけだ。

2017年8月に行われたブライダル事業部の「5周年祭」より。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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