スーパーCEO列伝
文/吉田祐基(ペロンパワークス・プロダクション) | 2018.12.10
ベクトルグループが商品やサービス、企業の情報を世の中に広める際、まずは“見せ方”を考えることから始まる。その上でニュースリリースやビデオリリースへと加工され、ネットを中心に配信された情報は、インフルエンサーや同社のメディアネットワークを通じて消費者のもとへと届く。モノが消費者に広まる過程をグループの各サービスで構成することで、戦略的、かつ効率的なコミュニケーションを可能にしている。
●PRコンサルティング
PRコンサルティングでは、ネーミングや伝え方(動画、テキスト、タレントの起用)など、届けたい商品やサービスの情報をより消費者へ響くように設計する。この役割を担うのは主にベクトルグループの中核であるアンティル・プラチナム・イニシャルの3社。各社に属するコンサルタントが、クライアント目線で最適なコミュニケーション手段を提案し、プランニングから実行までをサポートする。
●タレントキャスティング
タレントと、タレントを起用したい人をマッチングするサービス「Starbank」。登録しているタレントやその他著名人を、ウェブサイトや動画などに起用することで、テレビCMのようなメジャー感や信頼感を醸成することができる狙い。こういったタレントのキャスティングは、同社の子会社であるStarbankが担う。
●ニュースリリース
プレスリリース配信サイト「PR TIMES」は、1万2000媒体以上のメディアネットワークの中から最大300媒体に配信、また、朝日新聞デジタルや東洋経済オンラインをはじめとした20以上の大手ウェブメディアに掲載することができる。同サービス自体も月間1400万PV(2018年10月)に達しており、プレスリリースとメディアや記者とをつなぐプラットフォームの役割のみならず、サービスそのものがメディアとしての機能も有している。ニュースリリースの質の高さにも定評があり、今では上場企業の3割以上が利用。運営する株式会社PR TIMESは、2018年8月に東証1部への上場も果たした。
●ビデオリリース
テキストでプレスリリースを配信するのが「PR TIMES」なら、「NewsTV 」は動画で配信するビデオリリースのサービス。リリースやイベント等を、映画の予告編のように1分程度の動画に短く編集して配信。情報を圧縮することで、届けたい内容を短時間で消費者に理解してもらうことが可能となる。動画の情報量の多さに加え、動画ユーザー数の増加はPRとしてのビデオリリースの有効性を後押ししている。
●自社メディア群
動画・ニュースを配信する「クレイジー」、ライフスタイル・メディア「KAUMO」、ラグジュアリーファッション・ウェブマガジン「OPENERS」、女性目線で男性に求める本音を発信する「JION」、など、ベクトルグループでは累計月間1億5000万PVを誇るウェブメディア群を運営。これらを通じて、多額の資金を投じて不特定多数にアプローチするのではなく、コストを抑えて特定のニーズにアプローチすることができる。
●アドテクノロジー
PR TIMESやNewsTV等で制作したリリースは、メディアを介して発信するだけでなく、ターゲティング広告やアドネット等の、情報を拡散させるためのITも積極的に活用している。情報を発信して終わりではなく、こういったいわゆるアドテクノロジーを活用することで、SNS等を介して情報を消費者に直接届けることが可能となる。特に動画とアドテクの組み合わせは、速く、効果的に情報を届けるための新しいモノの広め方として注目が集まる。
●インフルエンサー
インフルエンサー・キャスティングプラットフォーム「Influencer bank」には、ファッションや旅行など多様なジャンルにおけるインフルエンサーが登録、総フォロワー数は6500万にも達する(11月現在)。企業側は、届けたい情報のジャンルに合ったインフルエンサーを起用することができ、ベクトルが手掛けるPRにおいてもこの仕組みを活用。拡散するまでの流れとしては、まず、インフルエンサーが情報発信を行いやすいように、ベクトル側で新製品発表会や試食会などのイベントを企画。イベントに参加したインフルエンサーが、そこで得た体験や感想をSNSで発信することで、商品やサービスの魅力をより多くの人に拡散させることができる。
●ブランドコントロール
株式会社ブランドコントロールでは、同社名に冠した「ブランドコントロール」サービスを展開。狙ったキーワードで世間に認知させるためのSEO対策や、企業や商品のブランドイメージを守るために、ネット上の風評被害の沈静化や予防、再発防止などを行う。モノを世の中に広めて終わりではなく、広まった後のイメージをコントロールする役割も、ベクトルグループでは一貫して担っている。
vol.56
DXに本気 カギは共創と人材育成
日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社
代表取締役社長
井上裕美