Passion Leaders活動レポート

[パッションリーダーズ]定例セミナー

もっと自由に、もっと自分らしく生きられる千載一遇のチャンス「Afterコロナ、新時代における幸福とは」

株式会社LIFULL

代表取締役社長

井上高志

文/宮本育 写真/阿部拓歩  | 2020.06.30

2020年6月23日、ネクシィーズグループ本社ビルにて、全国定例会が開催された。約4カ月ぶりの開催となるセミナーには、日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S(旧HOME'S)」などを展開する株式会社LIFULL代表取締役社長・井上高志氏がリモートで登壇、Afterコロナの世界に対してどのような構想を抱いているのかをロジカルに語った。

株式会社LIFULL 代表取締役社長 井上高志(いのうえたかし)

1968年11月23日生まれ。神奈川県横浜市出身。青山学院大学経済学部卒業後、リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。1997年、株式会社ネクスト(現:株式会社LIFULL)を設立。インターネットを活用した不動産情報インフラの構築を目指して不動産・住宅情報サイト『HOME'S(現:LIFULL HOME'S)』立ち上げ、日本最大級のサイトに育て上げる。現在は、国内外あわせて約20以上のグループ会社、世界63ヵ国にサービス展開。個人として究極の目標は「世界平和」で、LIFULLの事業のほか、個人でもベナン共和国の産業支援プロジェクトを展開し、一般社団法人新経済連盟 理事、一般財団法人Next Wisdom Foundation 代表理事、一般財団法人Peace Day 代表理事、一般社団法人ナスコンバレー協議会 代表理事、一般社団法人Living Anywhere 理事、公益財団法人Well-being for Planet Earth評議員などを務める。

2011年のパッションリーダーズ発足以来、毎月行なわれていた定例セミナーだが、新型コロナウイルスの感染拡大により自粛を余儀なくされた。だが、ようやく待ちに待ったこの日がやって来た。約4カ月ぶりの開催。会場には、万全の予防対策の下、抽選で47名の来場者を受け入れたほか、ZOOMとYouTubeライブ配信での視聴希望者も募集し、総勢252名が参加。会場で、そして、モニターを通しての仲間たちとの再会に、誰の顔にも笑みがこぼれていた。そんな和やかな雰囲気の中、井上氏によるセミナーが開催された。


 

コロナは、千載一遇のチャンス

皆さん、今回のコロナでは大変な思いをされたと思います。

僕自身、この経験から感じたことは、“千載一遇のチャンスが来た”ということでした。時代が変わるときは、起業家や経営者にとっては大きなチャンスです。もちろん、大変な状況ではありますが、これを抜けた先には進化した未来をつくれる。この機会をみんなでものにしていきませんか。

リアルと、ZOOM、YouTubeライブ配信による新しい形式で開催された。

これからの時代に対応した、未来の会社像を考える

そこで当社は、時代に合った会社経営をするため、「未来の会社像」について検討しました。

これからの会社はオンラインや在宅ワークが中心になるので「理念の共有」が欠かせません。そもそも自分の会社はどんな価値を提供しているのか。例えば、飲食店の場合、美味しい料理を提供することは手段であって、その中にどんな価値があるのかを突き詰めていく必要があります。

次に「報酬・手当」。例えば、今まで会社に出勤することが当たり前でしたが、これがなくなる、もしくは出勤日数が減ると、通勤交通費が削減されます。代わりに、削減されてできた余剰分を、社員の自宅内のワーキングスペースの整備費に充てるといったことを考えています。

次に「人員配置・リソース配分・業務自動化」です。当社には、3年前から日次採算システムを導入しており、全社員の一人1時間あたりの成果の可視化を行なっています。誰がどんなアクションをして受注につなげたか、エンジニアがどんなプログラムをいつリリースしたかなど、アクションと成果の一連の動きが見えます。これにより、ハイパフォーマーが手本となってチーム全体のパフォーマンス力の最大化を図れるほか、オンライン化によって見えにくくなったプロセスやアウトプットなども可視化され、社員を適正に評価することができます。

また、「リモートワーク拡充」を図るため、サテライトオフィスの設置も検討しています。それも1カ所ではなく、東京から1時間圏内に複数です。

目指すは、オフグリッド社会、自律分散型社会

冒頭で、コロナは千載一遇のチャンスと言いましたが、大きく変わる社会に向けて、当社でどのような取り組みを行なっているかをご紹介します。

ひとつは「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。これは単にデジタル化するということではなく、ビジネスモデルそのものも発信していき、強い競争力、差別化を図っていきたいと考えています。特に力を入れているのは、「オフグリッド社会」「自律分散型社会」の創造です。コロナをきっかけに暮らし方や働き方、さらには生き方すらも変化すると思っています。それを支えるのはテクノロジーです。

グリッドとは送電線のことで、電気が通っていないと何もできない、といったように、私たちはグリッドに制約されて生きています。ほかにも、水道がない、ガスが通っていないといったことを理由に、それらが整備されている場所にしばられて生きています。これをテクノロジーの力でオフグリッド、どこでも生活できるようにしたいと考えています。

そうすると、オフグリッド化されたクラスターが郊外や地方に散らばっていき、自律分散型に。今後はそういった社会構造がいいのではないかと思っています。

オフグリッド化の最大のメリットは、リビングコストが大幅に削減される点です。例えば、世帯年収100万円で、家族全員が今よりも豊かで質の高い生活を送ることも夢ではありません。このような社会になるよう仕掛けていきたいと考えています。

地方創生事業が、今後、加速する開疎化をサポート

コロナをきっかけに、都市での暮らしに疲れた人たちが、今後、どんどん郊外や地方に分散していくと予測しています。

当社は、数年前から地方創生事業にも着手しており、なかでも年々増え続ける空き家(遊休不動産)問題の解決に向けて取り組んできました。例えば、約600の自治体と提携し、収集した空き家情報のデータベース化をはじめ、空き家を活用する人材の育成と、それらと地方自治体や地方企業を結ぶマッチング、空き家の活用成功例などを共有できるプラットフォームの提供、さらには空き家を使った事業をスタートするための資金を集めるクラウドファンディングなど、ヒト・モノ・カネ・チエに関わるサービスを行なっています。

この事業で提供しているサービスが、都市から地方へ移住する「開疎化」のサポートにつながると考えています。

中小企業のコンパクトさが新しい働き方にマッチする理由

開疎化により、会社の形態も変化していくと考えています。もっと言うなら、15年後には会社そのものがなくなるのではないかと思っています。個が自分の好きなことで、好きな時間で、得意なことを持ち寄り、プロジェクトとして実行し、完成したら解散する。また、本業のほか、副業で4、5つの仕事をしているのが当たり前になっているかもしれません。

お金がそんなにかからない生活スタイルに変わり、働き方も自由度が上がっていくと、大企業よりも中小企業のほうが、小回りがきくように感じます。むしろ、動きやすくて、才能も伸ばされて、面白いかも。今まではお金を稼げるかどうかが重要な指標でしたが、あまりお金のかからない時代を実現できたら、大きく価値観が変わると思います。

当社では、5年以内に子会社を100社つくろうと計画しています。中央集権的な社会構造は息が詰まるし、ルールばかりで窮屈だよねと言いながら、巨大なピラミッド構造の組織のままだと説得力がないので。自分たちも自律分散化していき、僕の言うことなんか聞かない子会社長ばかりがたくさんいるような、そんな組織のほうが幸福度は高いのではないかと思っています。

さらにその先の未来へ

もう少し先の未来についてもお話したいと思います。

現在、当社では、「LivingAnywhere Commons事業」に取り組んでいます。これは、その名のとおり、どこででも生活することができる、どこででも生きていくことができるテクノロジーを創造し、自分らしく、もっと自由に生きられる社会を目指すものです。

人は、おもに「場所」「時間」「お金」という3つの制約にしばられています。今回のコロナで、これらから解放される社会に一歩近づいたのではないかと感じています。

未来では、AIやロボティクスが進化し、人の仕事がどんどん楽になっていると思われます。そうなると、働く時間がぐんと少なくなり収入は減少。リビングコストが高止まりしたままだと、生活が苦しくなります。これを解決するためには、リビングコストを削減できるテクノロジーが必要になってきます。

そこで活躍するのが、オフグリッド化するさまざまな技術です。電気は自家発電、水と光と空気によって人工光合成して取り出した水素エネルギーも大きな資源になります。この水素エネルギーは燃焼すると、きれいな真水が廃棄物として出ますので、これを生活用水や飲用水として使うことができる、循環型テクノロジーとして活用できます。これらの技術がリビングコストの削減に大きく貢献することでしょう。

また、通信は5Gが普及し、医療・教育・仕事をリモートできるツールがどんどん拡大。このような取り組みを、個人や企業、行政とともにすでにスタートしています。ここで開発したテクノロジーは、未来の生活のためだけでなく、途上国のインフラ整備、自然災害時のインフラ確保としても活用することができます。しかも、大きなコストはかかりません。

とはいえ、やはり人には会いたいです。そう考える人たちが集まる「LivingAnywhereCommons」という簡易宿所タイプの拠点をつくっています。ビジネスマンや研究者だけでなく、一般の大人から子どもまで、さまざまな人たちが集まる共有スペースで、利用料は月額2万5000円。これだけ支払えば、宿泊はもちろん、ワークスペースとして全国の拠点を使えます。水道光熱費も通信費も含まれているので、食費を除けば、年間30万円あればここで生活できます。現在、全国に5拠点を設けましたが、2020年末までに10拠点、2023年までに100拠点まで拡大する予定です。

BCP(事業継続計画)の観点から見ても、いざというときに本社機能を移せる、このようなサテライトオフィスがあると安心です。

大胆な決断を迫られる今だからこそ出来ること

私は世界平和も目指していて、毎年9月21日に「PEACE DAY」フェスを開催しています。

世界平和と言い始めたのは、僕が32歳のときで、当時は「世界平和」と口に出すだけで、周囲の人たちは凍り付いていました(笑)。しかし、19年間取り組んできて、今では多くの著名人の方々にご賛同いただき、昨年開催したフェスには一日約7000人を動員しました。

皆さんも、やりたいことがあったら、しっかり周囲に宣言し、有言実行してください。笑われても行動していくと、どんどん形になっていきます。今このとき、大胆な決断ができるタイミングです。お互いに面白いことをどんどん仕掛けていきましょう。


ワクワクする、刺激的な話に、これからの時代に向かっていく勇気がわいた30分間だった。

そして最後には、4カ月ぶりの全国定例会を誰よりも楽しみにしていた、DDホールディングス代表取締役社長・松村厚久氏が登場!話題のマンガキャラクターに扮し、コロナを滅するため、菌滅隊を従えてステージ上へ。ネクシィーズグループ・近藤太香巳代表のお面に、お揃いのTシャツを着たメンバーとともに、滅菌の舞を披露した。

遊び心と笑いの絶えない、パッションリーダーズらしい集いに戻った瞬間だった。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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