Passion Leaders活動レポート

[近藤太香巳シリーズ講演plus+]

アフターコロナは下剋上!今こそ磨くビジネスモデル

株式会社ネクシィーズグループ

代表取締役社長 兼 グループ代表

近藤 太香巳

文/宮本育 写真/阿部拓歩 | 2021.05.31

東日本大震災による未曽有の被害で日本中が深い悲しみに包まれていた2011年4月18日、全国のビジネスリーダーや起業家たちでこの状況を何とかしようと生まれた「パッションリーダーズ」。設立から10年が経った2021年、今では全国9拠点・会員4,000名を超える、“日本一の経営者交流団体”へと成長した。今回は、パッションリーダーズの創設者である近藤太香巳代表理事が登壇し、いまだ出口が見えないコロナ禍の時代に研ぎ澄ますべきビジネスモデルと、それを戦略的にプロモーションするための思考について語った。(2021年4月27日に開催されたパッションリーダーズ全国定例会より)

株式会社ネクシィーズグループ 代表取締役社長 兼 グループ代表 近藤 太香巳(こんどう たかみ)

1967年11月1日生まれ。19歳のとき、50万円を元手に会社を創業。34歳でナスダック・ジャパン(現ジャスダック)へ株式上場し、37歳で2004年当時最年少創業社長として東証一部に上場。2015年グループ2社目を上場。エネルギー環境事業、電子メディア事業、経営者交流団体「パッションリーダーズ」のいずれも日本一の規模にまで拡大。新プロジェクトであるセルフエステBODY ARCHI(ボディアーキ)を全国に展開中。常に新しい事業領域にチャレンジを続け、ビジネスパーソンから若者まで情熱あるリーダーとして圧倒的な支持を得ている。世界的経済紙・Forbes(フォーブス)による『Forbes Asia’s 200 Best Under A Billion 2018』に選定。『JAPAN VENTURE AWARD 2006』最高位経済産業大臣賞受賞。『シーバスリーガル ゴールドシグネチャー・アワード2009 Presented by GOETHE』ビジネスイノベーション部門受賞。2020年業界をリードする環境先進企業として、環境大臣より「エコ・ファースト企業」に認定。

今から新型コロナウイルス終息を見据えて行動する

近藤氏 僕が19歳で会社を創業したとき、不動産バブルがはじけました。当時のことを今振り返ると、もし不動産バブルが崩壊していなかったら、家賃は高いまま、人も雇えず、会社をつくることはできなかったと思っています。もっと言うと、世の中がどんな状況になろうとも、生き残る会社は生き残るということ。大切なのは、ピンチをどうチャンスに変えるかです。

特に今から、中小企業は攻めの姿勢をもつことが重要だと思っています。経営が大変だから縮小するという考えも大切ですが、新型コロナウイルスの感染拡大はいつか終わりのときを迎える、ということを忘れてはなりません。

先日、楽天の三木谷浩史氏と会ったとき、おそらくアメリカは、ワクチン接種が進んで、1か月以内にほぼ通常に戻るだろうとおっしゃっていました。日本においても、今の状態が何年も続くとは思えない。

ならば、今から、新型コロナウイルスが終息したときのことを考えながら動かないといけません。今、縮小して、そこからまた拡大するとなると、ゼロからスタートするよりも何倍ものパワーがいるので、中小企業の経営者は、今から攻めに行くという気持ちで挑んだほうがいいと思います。

「初期費用0円」で2歩先の理想を叶える

ビジネスとは、お客様の不安・不満・不利・不足を解決することです。つまり、世の中の課題を解決することを前提に、僕はビジネスをつくっています。例えば、100円で仕入れて1,000円で売れば900円儲かる、という視点でビジネスモデルを考えると、それは誰にでもできることで、真似もされます。とても楽ですが、魅力的なサービスはつくれません。世の中が求める理想は何なのかを追求し、その理想をどうすれば具現化できるのか、それを実行するのがビジネスだと思っています。

そういう意味で、僕が本物の経営者としてはじめにビジネスにしたのは「携帯電話」でした。当時、携帯電話は初期投資に20万円ほどかかりました。それを月々2,000円で所有できる仕組みを構築したのです。

また、「衛星放送」もそうです。当時、スカパー!やWOWOWを知っている人はたくさんいましたが、そこでどんな番組が見られるのか、どれくらいの料金がかかるのかについてまで知る人はわずかでした。そのネックとなっていたのは、番組数が膨大すぎて選択に迷うということ、さらにチューナーを購入しないと見られないことでした。見るまでの準備段階で心が折れてしまうため、衛星放送の認知度は高かったものの、普及は伸び悩んでいたのです。

そこで僕は、衛星放送チャンネルへの加入と視聴番組をパッケージにして販売することにしました。これにより、番組会社からインセンティブをいただけることになり、それがチューナーの仕入れ値を超えたことで、チューナーを無料、つまり「初期費用0円」で提供できたのです。

お客様にとって加入へのハードルがぐんと下がりました。月々2,000、3,000円の利用料だけ払えばよく、番組選びに悩むこともありません。もしパッケージ外の番組が見たければ、追加料金を払えばいい。しかも、当時1、2万円したチューナーが無料です。

当時、様々な家電量販店で衛星放送の契約ができましたが、全家電量販店での契約数は2割、残りの8割は我々の働きかけによるものでした。

他にも、ETCや「Yahoo!BB」、LEDも、初期費用0円もしくは0円に近い金額で提供できる仕組みを展開したことで、莫大な数の契約数を獲得でき、広く世に普及することができました。

だから僕は思うんです。マッサージでもネイルでも、500円や1,000円の体験料金を設定しているところがありますが、最初は無料にすればいいじゃないかと。どんなサービスなのか、他社との違いはどうなのか、受けてみないとわからないから、最初はタダにして、そこから継続してもらうために工夫をしていく。僕はそのように、「初期費用0円」というのをずっとやってきました。

新しい仕組みや発想でチャレンジする

僕の20年来の友人であり、焼き肉チェーン「牛角」の創業者でもある西山知義氏。彼はチェンジのスピードがとても速い。特に「BLUE STAR BURGER(ブルースターバーガー)」がそうでした。オーダーから受け取りまで、人と一切接触せずにハンバーガーが買えるという仕組みをつくったのです。これにより、人件費といった経費を極限まで軽減できるので、そのコスト分を食材にあてて、他のファストフード店と同じ価格帯でありながら、品質はそれ以上のものを提供。そして、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い人出が少なくなった分、さらに人と接触しない仕組みをつくり上げました。

西山氏は僕に言いました。「仮にこれから数年コロナが続いても対応できる職種にする」と。そういう分野を飲食業界でやっていくと言っていました。

楽天が携帯電話に参入するというニュースは、皆さんも耳にしたかと思います。報道される以前に、僕は三木谷氏からそのことを聞きましたが、ソフトバンクの孫正義氏が携帯電話で苦労されていた様子を間近で見ていたので、結構大変だよ、と伝えたんです。

しかし、三木谷氏は、世界初の「完全仮想化クラウドネットワーク」という新しい仕組みで携帯電話業界に参入すると言うのです。これまでの通信の考え方を捨てて、ITの考え方だけで携帯電話の仕組みをつくると。それによって大幅なコストダウンが図れます。そして、このモデルをまず日本でテストマーケティングし、いずれ世界の通信会社に売っていくと言っていました。

いま挙げた、僕や、西山氏、三木谷氏のケースを聞いて、「それはお金があるからできるんでしょ?」と考える方もいるかもしれませんが、どのケースも自社よりも大きく強い者を相手にチャレンジしています。そんな大きな存在から見たら、「おまえ、お金がないのによくやるな」というところからスタートしているということ。それでも新しい仕組みや発想によって勝つことができるんです。これは何も僕たちばかりではありません。昨日会社をつくった人も、業績を伸ばしつつある人も、みんなその可能性はあるんです。

世の中の課題を見つけ、解決法を明確にする

ビジネスモデルを考えるとき、経営者の役割は何か。僕は、白いキャンパスにデッサンをするのが経営者の役割だと思っています。そこから色を付けたり、形を変えていく。ビジネスモデルというのは、今つくったものが即上手くいくわけではありません。常に変えていかないといけない。

例えば、現在、全国展開しているセルフエステ「BODY ARCHI(ボディアーキ)」もそう。いくらセルフエステといっても、お店に行くには電車に乗らないといけないので、大都市の店舗は新型コロナウイルスの感染拡大によるダメージを受けています。しかし、この状態はいつか終息する。その日が来たときのために、どんなホームページにしたら魅力的か、どうしたらお客様に選ばれるか、どうやったらリピートしてくれるか、どんなサービスをつくったら圧倒的な存在になれるか、常に研究・軌道修正しています。特に今は、そういうことを徹底的に考えて、仕組みを変え、もっともっと良くしていくことが大事だと思っています。

そこで僕は、以下の3つのことしか考えていません。

 世の中は、業界は、○○だ(現状)
 課題は、ネックは○○だ(問題点)
 我々は「○○で解決できます!」(解決法・強み)

これを簡潔に一言で表現できないビジネスモデルは、ブレるし、相手には伝わりません。

例えば、当社のLED事業で置き換えると

 照明メーカーから、蛍光灯や白熱電球の生産終了が発表された。
 課題は、次世代照明LEDへ交換が必要だが、交換工事費がかかる。
 我々は「初期投資0円ですべてLEDに替えます!」

皆さんも自分のビジネスに置き換えて、何が世の中や業界の課題なのか、それをどうやれば解決できるのか考えてほしいです。

“自分は”何ができるかではなく、“相手のために”何ができるかを伝える

プレゼンテーションとは、経営者もしくは会社の全能力を表現する場です。商談にしても、交流会にしてもそう。その中で自社をわかりやすくプレゼンテーションすることは大事です。

そういった場でよくやりがちなのが、「自分のことばかり伝える」ということ。しかし、これでは相手に伝わりません。大切なのは「相手のために何ができるか伝える」ことです。そうすれば、他者に心を尽くす人であることも伝わり、そういう人は慕われます。結局は、みんなもその人のためになるようなことをします。

また、最初の名刺交換の段階で、長い時間をかけてプレゼンテーションをする人がいますが、これはやめたほうがいい。名刺交換の段階では、ワンフレーズでわかりやすく伝え、相手が興味を示したら、改めてプレゼンテーションする機会をもらうほうがいいです。後ろに他の人も並んで待っているのに、長々と自分の話ばかりする人は、他者の心がわからない人、周りが見えない人と判断されてしまうので、かえって不利益です。

あと、余談ですが、複数の事業を行っていても、名刺は1枚にまとめること。複数の名刺を渡されると、どうしても中途半端に業界とかかわっているイメージが拭えません。やはり、一つのことに命を懸けるのが、スタートアップでは特に大事なことなので、名刺を1枚にまとめることでその覚悟が伝わってきます。

自社のナンバーワンを見つけること

SBCメディカルグループの相川佳之氏(パッションリーダーズ理事)がよくおっしゃっています。「ナンバーワンになったらすべてが変わる」と。僕も同感です。病院で、「一番いい先生を紹介してほしい」と言っても、「2番目に上手な先生を紹介してほしい」とは言いませんから。つまり、ナンバーワンになることはとても大事ということです。

しかし、いきなり日本一になるのは難しい。まずは角度を定めることです。例えば、パッションリーダーズは経営者が集まる日本一の団体です。異業種交流会というくくりで見たら、もっと大きな団体があります。ですが、角度を狭めて、“経営者だけによる異業種交流会”という視点で見たら日本一です。皆さんも、ある地域においてこれはナンバーワンだと言えることを見つけてください。その独自性がキラーカードとなります。

また、これがナンバーワンだということが見つかると、社員のモチベーションは上がりますし、そのことを誇りに思うはずです。さらにそれが社会に貢献しているとわかると、さらに社員の士気が高まります。そのことを、様々な体験を通じて、僕自身も実感しています。

まずは、小さなエリアからナンバーワンといえるサービスをつくること。それが誰にも負けない、唯一の強みとなる第一歩です。

他社がやっていない、できなかったことに着目する

ソフトバンクの孫正義氏が、iPhoneの販売を開始するとき、僕にこう言いました。「これからの携帯電話は携帯端末ではなくなる。インターネットマシンになるんだ」と。

当時の携帯電話は、電話をかける、もしくはショートメールを送るくらいの機能しかありませんでした。しかし、スマートフォンに切り替わり、今では誰もが持っていて、モノを購入したり、お店の予約を入れたり、動画を見たり、まさに孫氏が言っていたとおり、インターネットマシンとして利用するのが当たり前の時代になりました。

飲食店もそうです。かつては、多店舗展開しているチェーン店が強かったのですが、利用者が書き込める飲食店評価サイトやSNSの普及により、これまで見えなかった、料理やサービスのクオリティ、価格等が明瞭化され、個人店が勢いを増してきました。

そういう意味では、どの業界においても、他社がやっていないこと、できなかったこと、不可能だと思っていたことに着目して取り組めば、それがキラーカードになる可能性がとても高い。

ただ、新しいサービスやシステムをつくったとしても、使いにくいものは論外です。僕はインターネットに強い人間ではないから、僕が使えないものはダメだと社員に言っています。僕が簡単に登録でき、使えるものでないとダメなんだと。それが世の中の大半なんだと思ったほうがいいとも伝え、自ら使い勝手をチェックしています。サービスやシステムをつくる人は、みんなそれを理解できる、誰でも簡単に使えると思い込まないことです。

SNSは誰に向けているかを明確にする

自社のPRにSNSを利用している人は多いと思います。僕は注目されているSNSは徹底して体験し、現在はFacebookをメインでやっています。そこで、SNSで発信する際、自分の中でルールを決めています。

僕は経営者なので、7割くらいを経営者・リーダーを対象とした内容にしています。見た人が朝礼で使えそうなこと、共感してモチベーションが上がりそうなことです。次に、2割は自社の宣伝。残りの1割は社員や入社を考えている学生を対象に、社員との交流記録です。特に社員との交流記録は、写真をたくさん載せることもあり、みんなが一致団結している様子や社風が伝わり、それがより社内を活気あるものにしていきます。

自分が発信するものを誰が見ているのか。それを見た人がどう受け止めるのか。それを意識して活用することです。

また、経営者は会社の顔なので、興味を引くプロフィール、顔写真、ビジョンや志も大切です。何をやっている会社なのかがわかりやすいか、ビジョンや志は伝わりやすいか、写真に関しては、明るく見えるにはどのような背景がいいか、表情はどうかなど、さまざまなことを考えています。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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